PADIダイビングショップ アリエス

DIVINGSHOP ALIES

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 ダイビングで死なないためにやるべき10のこと

1. 死亡事故現場から得る教訓

20201121日(土)の八幡野ツアーの際、ダイビングの死亡事故に居合わせました。

 

20年以上この仕事をしていても、死亡事故の現場に居合わせることは少ない。

言うまでもなく、ダイビングで一番大切なのは安全に終えること。

 

2020年には、アリエスが行く身近な海で死亡事故が5件起きました。

こんなに頻繁に起きたことはありません。

 

2019年の海上保安庁が把握しているダイビングの死亡事故は14名。

2020年に当店が行く海で起きた死亡事故は5名。

2020年の統計が出ていませんので、2020年の死亡事故件数が多すぎるのか分かりませんが、

2019年の日本全国で14名という数字に対して、5名というのが多すぎる気がします。

 

「ダイバーのスキルレベルが著しく下がっている」

もうずいぶん前から言われていることで、当店のブログなどでも度々伝えてきました。

水中で見かけるダイバーには「いつ事故が起きてもおかしくないな」というレベルのダイバーが大勢いる。

 

今回の事故の目撃をきっかけに、報道にはない、または違った、自分の目で見たこの日の事故の経緯を振り返り、今一度“ダイビングで死なないためにやるべきこと”をお伝えしたいと思います。

 

水中という人が生身では生きていけない場所で行うダイビングは、ちょっとしたミスで命を落とすことがあるのです。

2. 事故の経緯

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

1121日(土) 晴れ 最高気温20℃ 

時折強めのうねりが入り、エントリー口付近は視界が悪かったが、防波堤を越えた辺りからは透明度も1012mほどと良好で、うねりも感じなくなった。

 

事故を起こしたダイビングショップ(以下、Aショップ Aはお店の頭文字などではありません)は、

1040頃、女性インストラクター1名と、男性ゲスト2名で潜水開始。

11時頃ロスト。

 

アリエスの潜水開始時間は1114、エキジットが1200

Aショップは一時間ほど捜索をしたが見つからず、1155頃に消防に通報。

 

当店がエキジットすると、ダイバー達が手を止めて、沖を眺めている。

なにか違和感を感じる光景だった。

エキジットのスロープを登っていくと、数台の消防隊の車が見え、

背中に水難救助隊の文字のある、オレンジのウエットスーツを着たダイバー達が慌ただしく準備をしている。

この救助隊は今年発足したばかりらしい。

 

まだ若く見える女性インストラクターは既にドライスーツは脱いでいて、インナーの状態で警察官に状況を説明している。

 

別のショップスタッフが事故に遭ったOさん(38歳)*1の、ストロボに2灯焚きのデジイチのハウジングを、水底17mほどで見つけて、持ち帰っていた。

これだけのカメラを持っているのだから、それなりの経験のあるダイバーではないかと思った。

*1 報道では実名が出ていましたが、このブログでは名字からOさんとさせて頂きます)

 

八幡野の休憩所は二階にあるので、捜索の模様が見えていた。

この時点でロストからかなりの時間が経っていて、漂流して水面にいない限り、

水中で拘束されていたとしても、空気が持つとは考えられなかった。

 

無線で「事故者発見」の一報が流れると、水難救助隊のダイバーが漁船に乗り込み出船した。

捜索しているのは港からすぐの防波堤近くで、テトラポットの前あたり。

この日は強いうねりがあったので、引き込まれる力がかかるテトラの近くは嫌な予感がした。

 

救助隊のダイバーは水面にいるが、引き上げには時間がかかっているようだった。

港に戻るわずかな時間の間、船上で心肺蘇生をしている。

その船が戻ってくる港内では楽しそうにスノーケリングをする人たちの姿があった…。

 

八幡野のスタッフに事故者の容体を確認すると「厳しい」との話だったが、後になって死亡が各報道で発表された。

 

この日、潜水が中止になることはなかった。

 

Aショップでは2019年にも死亡事故が起きている。

大きなお店なので、お客様も多いだろうし、スタッフも複数いるので事故が起きる数としては多くなるかもしれないけれど、問題を感じたのは事故の内容。

 

西伊豆のやさしいビーチポイントでのこと。

この日は透明度が悪く、インストラクター1名に対してゲストダイバーは8名。

ゲストのレベルが分からないので、人数比に関しては何とも言えない。

 

この死亡事故で問題なのが、1本のタンクで2回の潜水を行ったこと。

1本潜って、タンクを交換せず、空気が満タンではない状態で2本目を潜ったのです。

 

例えば何かの事情で、ほとんど1本目にエアを使わなかったのならともかく、潜水エリアぎりぎりの広範囲を周ったという話もある。

この事故の死因は分かりませんが、AEDを使い、心肺蘇生を試みたが助からなかったとのこと。

 

タンクを1本しか使わなければ、経費が浮いて儲けが出るでしょう。

でも、お金儲けのために命を危険にさらしてはいけない。

この話を聞いた時に、このダイビングショップでは安全管理が出来ていないのだろうと思いました。

 

この手の話は安さをうたっているダイビングショップでは聞く話。

今でも印象的でよく覚えているのが、大阪のダイビングショップでハネムーンに行くために練習に来た花嫁さんが亡くなってしまったという事故。

 

この大阪の店も1本のタンクで、2回の潜水をして、バディチェックもバディシステムも怠り事故が起きました。

3. なぜOさんはなくなったのか

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

2020年に身近に起きた5件の事故の内、3件は病気が関係すると思われた。

Oさんに持病があったかどうかは、このブログを書いている時点では分からない。

 

突然死のような形であれば、どうあっても助けることは出来なかったかもしれない。

この事故で一番気になるのが“ロスト後”に起きているという事。

 

ダイビング中にパニックや持病が発生し、意識がある場合には、100%と言ってよい確率でダイバーは水面に出ようとする。

以前ある統計で「事故者の70%は一度水面まで戻っている」という発表があった。

そして、一度水面には出たものの、浮力の確保が出来ずに(あるいはせずに)、また沈んでしまい溺死する。

 

仮に病気であったとしても、インストラクターの目の前で起きていれば、何か結果が違ったかもしれない。

 

例えばレギュレーターが何かの拍子に外れてしまい、自分ではリカバリー出来なかったとしても、インストラクターやバディが近くにいれば呼吸は確保出来る。

 

カメラはなぜ水底に落ちていたのか?

通常、体に固定されているはず。

事故の拍子にランヤードが切れてしまったのかもしれない。

テトラポットの近くで起きた事故というのが気にかかる。

例えば、大きなデジイチを持っては入れないテトラの中に、何か見たい生物がいて、テトラの中に入ったら水中拘束にあったとか、テトラに吸い込まれた衝撃でカメラが外れたとか。

 

これは推測に過ぎないけれど、ここでお伝えしたいのは、うねりや流れがある時に“狭い場所”に近寄ってはいけないということ。

水中で“浮いている”ダイバーは簡単に引き込まれてしまい、手がふさがれば後退することも出来ず、その時にレギュが外れれば拾うことも出来ない。

 

まだ若くして命を落とされた、Oさんのご冥福をお祈り致します。

死なないために、やるべき10のこと

4. 第一のやるべきこと< 上手くなる >

ダイビングで死なないためにやるべき10のことダイビングショップアリエス

では、ダイビングで事故に遭わない、死なないためには、どうしたら良いのでしょう?

 

まず第一は上手くなること。

ここで言う“上手くなる”とは上辺だけのものではありません。

例えばランクがインストラクターだとか、沢山講習を受けているとかいうものではない。

ダイビングを安全に楽しめる真の実力のこと。

あまり少ない場合はともかく、経験本数もあまり関係ありません。

300本位潜っていても、下手なダイバーというのはざらにいる。

 

これから出てくる数値や傾向は、

海上保安庁発行の「令和元年(2019) 海難の現況と対策 ~大切な命を守るために~」

を参照にしています。

 

これによると2019年のダイビング事故者は海上保安庁(以下、海保)が把握しているだけで41人。

死亡・行方不明者14人、生存者は27人。

これは海保が関わった事故だけの数値で、直接病院に行った事故や、海外で起きた日本人の事故は入っていません。

 

経験年数別事故者数では、ダイビングが初めて(27/11人)と一年未満(15/6人)という人で42%を占めている。

いかに初心者の事故が多いかというのが分かる数値。

 

“ダイビングが本当に上手くなれば事故は減らせるはず”

では、“ダイビングが上手い”とは具体的には何が出来ることでしょうか?

 

上達には様々な段階がありますが、初心者ダイバーは、

まず「オープンウォーターコースで習ったことが全て出来る」ようになること。

これは簡単なことに聞こえるでしょうか?

 

オープンウォーターコースはダイビングに必要な基本スキルがすべて詰まっていて、かなりの本数を潜っているダイバーでも完全に出来ていない方もいる。

 

例えば、最初から最後まで一つのミスもせずダイビングを終えていますか?

ミスをしているのに「これはミスの内に入らない」とカウントしないダイバーもいます。

 

セッティングが出来ない、バディチェックが出来ない。

これでは「私はダイビングが出来る」とは言えないし、この2つが出来ないばかりに起きる事故もある。

 

ウエイトを通し間違えた、

エントリー間際になってマスクの調整をしている。

泳いでいたらフィンが外れた。

これも全てミスの範疇。

 

適正ウエイトで潜降出来ていますか?

(そもそも自分の適正ウエイトを知っていますか?)

泳いでいる途中でフィンを止めた時に、ずっと浮いていられますか?

水中で自由自在に動けますか?

今は「ダイビングが出来ないのに認定する」インストラクターが増えいて、ダイバーの全体的なレベルは下がり続けている。

 

その次の段階が、様々なコンディションで満足にダイビングが出来るようになること。

ディープやドリフト、波のある海況でのビーチでもボートでもエントリー、エキジットが

スムーズに出来ることなど。

これと同時に長く潜れる、遠くまで泳げるなども出てくる。

 

ダイビングの上達には終わりがなく、まだまだ先がありますが、オープンウォーターコースで習ったことが完全にマスターされていて、自分が潜る海に対応出来るスキルがあることが事故に遭わないために、最低限必要なこと。

そして、この身体的スキルの他に知識や意識が伴わなければなりません。

しかし、これはあくまでもスタートライン。

 

さらに、ここから以下に出てくる項目を、あなたがダイビングを辞める時まで維持し続けなければいけない。

どんなに長くダイビングを楽しんで来ても、一つのミスで命を落としてダイビングを終えるようなことがあってはならないのです。

5. 第二のやるべきこと< スキルを維持する >

ダイビング事故が起きる原因とは?|ダイビングショップアリエス

経験年数別の事故の割合で、一番多いのが一年未満の初心者で42%(17人)

その次に多いのが10年以上のダイバーの29%(12人)

 

年数だけなので、この中には「年に一回リゾートで潜るだけ」という、年数の割に経験本数は少なく技術不足というダイバーもいるはず。

技術不足は一番に大切な「上手くなること」から外れていますから、その時点で事故が起きる可能性はある。

 

定期的に潜っているダイバーであれば、10年以上もダイビングをしていれば“ベテラン”と呼ばれ、本数も200300本はいっているでしょう。

なぜ、ベテランと呼ばれるダイバーの事故が多いのか?

 

1つには過信と油断がある。

「私はダイビングに慣れているから大丈夫。300本も潜っているんだから」

 

その過信と油断がスキルが落ちていることに気づかず、事故を起こす。

これを読んでいる10年以上の経験がある方で、潜り始めたころと、今のダイビングの頻度が変わらないという方はどれくらいいるでしょう?

ほとんどのダイバーはダイビングの頻度が落ちているのではないでしょうか。

 

もちろん様々な要因があり、ずっと同じペースでは出来ないでしょう。

重要なのはスキルを維持すること。

私が“上達線”と呼んでいるものがあります。

縦軸に「上手さ」横軸に「経験本数と時間」

この縦軸の「上手さ」をある一定の水準に保ち、油断と過信をなくすことで、多くの事故は防げるのではないでしょうか。

 

この「上達線」を落とさないために必要なダイビングの回数は人によって違う。

それはスキルが落ちやすい方もいれば、落ちづらい方もいるから。

 

ダイビングの頻度はスキル維持という技術面もそうですが、もっとも注意をしなければいけない「パニックになる」というメンタル面にも影響をする。

やはり水中という特殊な環境では慣れているという要素が大きい。

ただし、この慣れが油断になってはいけない。

 

「どうしてもダイビングの頻度は増やせない」

そういう方もいらっしゃるでしょう。

そういった場合には「難しいダイビングポイントには行かない」という選択肢もあります。

 

ただ、事故はどんなに優しい海でも起こる。

そう考えると「上達線」がある一定以下になった方はダイビングをしないか、また定期的に出来るようになるまでお休みするのが良いのかもしれません。

 

「いや、年に一回でも二回でも良いから潜りたいんだよ!」という方もいるでしょうが、こういったダイバーが一番危ない。

ダイビングが出来なくても、事故に遭うより良いですから。

 

そして、ダイビング経験が10年以上という事は、30歳で始めた人は40歳になり、40歳で始めた人は50歳になっている。

10歳年を取れば体力も変わる。

 

年齢別の事故率を見ると、もっと多いのが50歳代で32%(13人)

60歳以上は22%(9人)ですが、ダイビング人口の数を推測すると、60歳代がもっとも事故率が高いのかもしれません。

そして、40歳以上で事故の71%を占めている。

2020年夏季(78月)の事故も50歳以上の方ばかり。

 

ダイビング活動をしている全体の人数というのは統計がありませんので、年齢別ダイビング人口に対する比率は分かりませんが、事故が中高年に多いというのは事実。

 

事故内容で一番多いのは溺水54%(22人)で、続いてが病気で27%(11人)

やはり加齢が進めば持病も出てくるでしょう。

病気の発症からパニックになり溺水というパターンを考えると、病気はもっと多いのかもしれません。

 

40代以上、特に50代以上でブランクや持病がある方は、より慎重な姿勢でのダイビングが必要です。 

6. 第三のやるべきこと< パニックにならない >

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

ダイビングでもっとも恐ろしいのがパニックになること。

パニックはあなたが持っている全ての知識と技術を一瞬にして消し去り、役に立ちません。

 

病気による突然死を除けば、ほとんどパニックになって、事故が起きているのだと思います。

(漂流して息絶えるとか、水中拘束にあって身動きが取れないとかもありますが、稀なケースなので)

 

みなさんは水中でパニックを起こしたことはあるでしょうか?

「ないよー」という方が多いと思います。

今までインストラクターをやってきて、自分のゲストが完全なパニックを起こしたのは、覚えているのは3回ほど。

 

その3回ともたまたま目の前で起きたので事故にはなりませんでしたが、

そのうち一回はダイビングライセンス取得コース中で、マスクのスキルでパニックになり、マスクもレギュレーターも外してしまい急浮上をしようとした。

急浮上させないように抑えましたが、もの凄い勢いで暴れるので、私のレギュも取ってしまいました。

 

ここまでのパニックになる人は僅かですが、私がプチパニックと呼んでいるものは、わりとしょっちゅう起こる。

ゲストの方に「パニックになってましたね」というと嫌がると思うので、直接は言いません。

 

プチパニックとは、

・理にかなった行動が取れない

・指示や合図に反応しない

など。

 

例えば、行ってはいけない方向に、一目散に泳いでいった、

「エアを入れて!」の指示に反応出来ない。

こんなことがあったら、あなたはプチパニックになっている。

 

もちろん単純に理解力不足で出来ないというお客様もいる。

プチパニックのダイバーとの違いは「動きの慌ただしさ」と「目」

程度にもよりますが、プチパニックのダイバーは目を見開き、何かに怯えたように、急かされたように動く。

 

普通に呼吸していれば、ダイビングを終えれたのに、エアが少なくなった(40気圧水深5mで、エキジット口まで僅かな距離という状況で)恐怖心から焦って浮上してしまったゲストがいました。

プチパニックですら安全なダイビングを危険なものに変えてしまう。

本当のパニックであれば命の危険は、すぐ傍にあるでしょう。

 

“パニック”はスキルアップである程度はカバーすることが出来る。

しかし、もともとパニック傾向のある人がいて、そういった方にはダイビング自体を勧めません。

水に対する恐怖心が強すぎると、波のない海を水面移動しただけで、目を見開き、呼吸が乱れ、レギュレーターを外してしまった方がいました。

この「苦しくなるとレギュを外してしまう」という行動が怖い。

また、持病が引き金となり、パニックに陥る方もいる。

 

例えCカードを持っていても、器材を持っていても、パニックをすぐ起こす方には、私はダイビングを辞めるように言います。

 

「素晴らしい水中世界を見てみたい」

それが出来ないのは残念ですが、水中が怖いのならスノーケリングを、水中を見たいなら、見られる風景は限られますが体験ダイビングをやりましょう。

命を落とすより良いですから。

 

パニックにならないためには「上手くなる」「スキルを維持する」こと。

トラブルが起こった時には全ての動きを止めて、自分に落ち着くように言い聞かせるようにしましょう。

7. 第四のやるべきこと< 自己管理をする >

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

病気が事故原因の二位で、病気が原因で事故が起こり、結果、第一原因の溺水したというのもあるでしょう。

 

特に40歳以上や持病がある方は、ダイビングが分かる病院を一年に一度は受診して、ダイビングをしても問題がないかを確認しておきます。

そして、ダイビングの日は自分で体や心に潜っても問題がないかを問いかけましょう。

 

本来はダイビングをするのに問題のない病気だったとしても、自己管理不足で誘発してしまうケースもありました。

 

2019年に神子元で起こった死亡事故は心筋梗塞で、ガイドさんが指摘していたのは、

「夜出のチームで宿で宿泊をして、睡眠が取れていると良いのだけど、事故に遭った人は朝出で寝不足だったらしい」ということ。

 

2020年の事故では、モルディブを得意としている旅行会社さん企画のツアーで、連日潜っていて、寝不足や疲労、飲酒が原因しているのではないか?とのことでした。

 

ダイビング自体がそうですが、特に神子元などは精神的な緊張度も高く血圧も上がりやすく、普段緩やかなダイビングをしている人には運動量も多く、身体的な負担も大きいので、事故になる確率も増えると考えます。

 

自己管理では病気や睡眠、飲酒などの体調以外に、ダイビング器材のメンテナンスもきちんと行いましょう。

器材に起因する事故もありますので。

 

上達、スキル維持、自己管理が出来た上で水中で行って頂きたいことを以下に記していきます。

8. 第五のやるべきこと< ブリーフィング通りに行動する >

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

ブリーフィングで「ロープ潜降をしてください」と言われていたのに、ロープを離してフリー潜降して行方不明になり、30mの水底で溺死していたという事故がありました。

アドバンス講習中の出来事です。

 

死亡の直接原因は分かりませんでしたが、ロープを離しただけ起きてしまう事故もあるのです。

「ロープを掴みながら水底まで降りる」

難しいことではありません。

 

このごく簡単なことが出来ず「ロープを離したがためにトラブルにあう」というのが少なくありません。

 

流れがある時は必ずロープ潜降、流れがない時でもロープを指標にしながらの完全な潜降が出来ないダイバーは必ずロープに掴まりましょう。

手繰るのではなく、掴まる。

浮上の時も同様です。

 

「ロープに掴まるのは初心者で恰好悪い」とばかりにロープを離して、あさっての方に流されていくダイバーがいますが、よほど恥ずかしい。

 

ある時は水面に流れがあったので、「水深10mに集合です。これ以上は深く行かないでくださいね、エアもNDLも少なくなってしまいますから」と伝えていたのに、20mの水底まで行ってしまったゲストがいました。

「どうして行っちゃったの?」とエキジットしてから聞くと、返ってきた答えは

「大丈夫だと思った」…(-_-;)

意味があって10m集合にしているのだから、ここは勝手に変えてはいけません。

 

ある流れが強い上級者向けのポイントでのこと。

ブリーフィングでは「ダウンカレントがありますから、必ず根の端まで行ってから泳ぎ始めてください」と言われていました。

 

その時、700本は潜っていたダイバーは、このブリーフィングを守らず、根の途中から泳ぎ始め、ダウンカレントにはまり、水底に落ちていきました。

 

ブリーフィングを聞いてなかったのか、大丈夫だと思ったのか分かりませんが、指示通りにダイビングをすることが重要です。

 

インストラクターからツアー中や講習などで、水中での行動に関して教わることは沢山あると思います。

一回のブリーフィングですべてをお話しすることは出来ません。

時にはブリーフィングに出てこなかった状況も起きるでしょう。

その時に初めて、それまで教わったことの中で判断して行動をしましょう。

9. 第六のるやべきこと< バディ意識を持つ >

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

「バディを意識していると事故が防げる」

ピンとこない方もいるかもしれません。

 

このバディ意識を持つというのが、意識をすれば簡単に出来ることで、事故を防ぐ上では極めて重要で、未然に防げるものも多いし、仮に起きたとしても重大事故に発展させないことも出来るはずだと思っています。

 

日本ではバディ潜水をすることがほとんどないので、バディ意識が低いダイバーが多い。

 

中にはバディがいなくなったのに気づかないダイバーもいる。

振り返って「バディは?」の合図を出して、初めていないことに気づく。

ここで二通りに分かれます。

バディがいなくなったことに気づけずに悔しがる人。

 

もう一つは、別に気にもせず「下手だから浮いていったんでしょ!」と笑っていた方もいました。

かなり潜っている人でしたが、それからどんなに潜っても“本当に上手いダイバー”にはなりませんでした。

 

ダイビングは自己責任で行うものですが、もちろん「バディがどうなろうと関係ない」訳では、当然ありません。

人間が生身では生きられない水中では、グループ全ての人が助け合うことが安全性を高めるのです。

 

ダイビングショップのツアーではバディは決めていると思いますが、

器材を背負ったり、ログにバディサインをもらう時だけの関係になっていないでしょうか?

水中では極力、バディが視界に入るようにして、手の貸せる位置にいる。

「なにかトラブルがあった時には助ける」

または自分で対処出来なくても、インストラクターに知らせるだけでも有効です。

 

インストラクターやガイドは通常前を向いていて、振り返るのは数分に一度。

中には魚を見せる時以外は振り返らない人もいるでしょう。

真っ先にトラブルを発見出来るのはバディ。

 

バディは必ず横並びになること。

以前、「常に上からバディを見守っている」という経験の長いダイバーがいましたが、下にいた方はバディがいなくてキョロキョロしてしまい、安心感がありません。

もちろん自分の方がスキルが下でも、後ろから付いていくだけでも駄目。

 

バディは接近しすぎなくても良いので、横並びになり、他のバディとは間隔がある程度空いているのが良い形です。

10. 第七のやるべきこと< 位置取りを考える >

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

位置取りとは水中でインストラクターに対してや、グループ内でどういった配置に自分がいるか。

 

生物を楽しむためにも使いますし、安全性を高めることも出来る。

 

位置取りは一つの正解がある訳ではなく、ダイビングポイント、海況、人数などにより変わるもので、個人の経験に基づく判断力が重要。

 

今まで聞いたブリーフィングの中で「初心者を前に出してあげてくださいね」と言われたことがあるかもしれませんが、それも位置取り。

 

通常、当店のブリーフィングに入れているのが、イントラより前に出ない、深く行かない、他のダイバーに近づきすぎて蹴られない

 

この3つと、「常にガイドに自分の姿が見える位置にいる」のが最低条件。

「自分からはガイドが見えている」のではありません、「ガイドから見えている」ことが重要。

 

事故はロストから起きていることが多い。

イントラより前に出られると、ガイドを妨げることもありますが、人数確認がしづらくなる。

事故の中にはエキジットしてから人数が足りないことに気づき、結局亡くなってしまったということがありました。

 

人数を確認するのはガイドの責任だと思いますが、ゲストダイバーの位置取りがあまりに悪いと、数えるのに時間がかかり、思うようにガイドが出来ない。

特にリゾートでチームが四方八方に散らばっているのを見ることがありますが、

ガイドも「全員いるだろう」という潜り方になってしまうのかもしれません。

そのため、いなくなってもガイドもバディも気づかない。

 

< 他のダイバーに近づき過ぎて蹴られない >

 

よく初心者の方が私の真後ろに付きすぎて、蹴ってしまうことがある。

「近づき過ぎないでください」と伝えると「はぐれないように近寄ってしまう」と言う方がいます。

 

海の中は上下左右に動けますので、ガイドの近くにいるようにするならば、1mでもずらせばいい。

 

フィンが当たれば気になりますし、あまり真後ろに付かれると、他のダイバーが見えづらくなり、安全性が下がってしまいます。

 

そして、蹴られることで起きる事故もある。

事故内容別で一番多いのが溺水。

以前見た事故の中に、周りに仲間のダイバーがいるのにも関わらず、レギュが外れて溺死というものがありました。

レギュレーターが自然に外れるというのは考えにくい。

原因は特定されていませんでしたが、蹴られた拍子にマスクやレギュがずれ(外れてではなく、ずれて)、海水を鼻や口から誤飲してレギュを吐き出してしまい、リカバリー出来なくて溺れてしまったのかもしれません。

 

もしそうだとすれば、

「他のダイバーに近づき過ぎて蹴られないこと」

「外れたレギュをリカバリーすること」という技術のどちらかがあれば、助かったでしょう。

 

< 距離感 >

 

「どの程度の距離を取ってればいいの?」と聞かれることがありますが、状況によりまったく違ってきます。

 

例えば透明度が3mしかなければ、1.5m位にいて自分の位置を知らせるためにライトの点灯も必要でしょう。

 

透明度の良い海でドリフトをしていれば56m離れてても平気。

 

ブリーフィングでこんなことをお伝えすることがあります。

「珍しい魚がいたら教えてくださいね」

これには2つの意味があって、

一つは「みんなで生物を探した方がより見つかりやすい。せっかく同じチームだからみんなで見ましょう」ということ。

もう一つが、自分(やバディ)だけで生物を見ていると、はぐれる可能性があるから。

特に今はカメラを持っているダイバーも多いので、撮り終わった時にガイドが見えなくなっていた、

ということもあるのではないでしょうか。

 

「珍しいのがいたんだ~」

「教えてくれれば良かったのに~」

「教えようと思ったんだけど、もう遠かったんだよね」と言われることがありますが、

これは既に水中で離れすぎ。

バディにも教えていない人もいて、これはバディとも近くにいなかったということですね

(まあ、近くにいたけど自分だけ見てるという人もいるとは思いますが) 

11. 第八のやるべきこと< 呼吸源を確保する >

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

水中にいる人間は呼吸が出来なければ生きていけません。

 

事故内容の一位は溺水で半数を超えている。

呼吸が出来なくなる原因として大きくは2つ、エア切れとレギュが口から外れること

 

少ないケースとしては、残圧はあるのにレギュから満足に空気が出ないパターン

考えられるのはタンクのバルブが半開きの場合。

苦しいと感じたら、残圧系を見て、息を吸うと針が下がり、吐くと上がる状態が半開き。

潜水開始すぐは吸えますが、残圧が少なくなったり、深いところに行くときちんと出なくなります。

潜水前のチェックがきちんと出来ていれば起こらないことなので、これは技術不足。

 

また、メインレギュの故障で出ない場合は、一番早く呼吸を確保出来るのは自分のオクト

これはレギュが外れてリカバリーが上手く出来なかった時にも有効なので、

常に自分でオクトを掴めるようにしておきましょう。

 

みなさんはレギュレーターリカバリーがきちんと出来ますか?

練習の時のように大きく息を吸った時に外れるとは限りません。

いきなり外れた時に落ち着いて拾えますか?

 

今までエントリー前や、水面にいる時に「レギュレーターのホースが脇の下になってるよ」と指摘されたことがある方は、外れた時にリカバリーが出来ないかもしれません。

それはレギュレーターリカバリーのスキルであるアームスイープ法(右手で体をなぞり、大きく手を回して見つける方法)やリーチ法(レギュレーターのホースの根元から掴む方法)をせずに、手でむぎゅっと掴んでレギュを咥えているから、レギュが脇の下からになってしまうのです。

 

肩回りが硬い人だと届かない人もいますが、お勧めはリーチ法。

これはレギュがどの場所にあってもつかめますし、アームスイープ法はいくつかミスをするポイントがあるため。

自然に出来ることが重要なので、常にダイビングの時はリーチ法でレギュを取ってみてください。

 

水から上がる前にレギュやマスクを外してしまう人は、溺れる確率が高い。

タンクを背負っているダイバーは波打ち際の浅い所で転ぶと身動きが取れなくなる人もいて、レギュやマスクがあれば海水を飲まなくて平気なものを、外してしまうが為に飲んでしまう。

 

浅い所だといって事故に遭わないとは限りません。

日頃のちょっとした習慣が生死を分けることだってあるのです。

12. 第九のやるべきこと< 浮力を確保出来る >

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

以前、ダイビング事故の分析で「溺水したダイバーのうち70%は一度水面に出た後に、沈んでいっている」という報告がありました。

 

もし、器材のトラブルや、エア切れを起こしてしまい(その時点で基本スキルがなってないですが)意志を持って水面に出て、エアがない状態で浮力確保をする。

すぐに方法が思い浮かびますか?

 

BCが壊れてないなら、エアがなくてもオーラル(呼吸)で膨らますことも出来ますし、ウエイトを外すだけで、ある程度の浮力は確保できるはず。

(ウエットスーツを着用、スチールタンクでノーウエイトのダイバーなどもいますので、全てのダイバーに通用するものではありません)

 

パニックになったダイバーは、ほぼ100%の確率で水面に向かう。

水面に出ても、パニックになっていれば浮力の確保が出来ず(せず)、特にオーバーウエイトにしているダイバーはあっさり沈んでしまう。

もしあなたがオーバーウエイトで、その重さに勝るフィンキックが出来ない場合には、浮上も出来ずに途中で力尽きて沈んでしまうかもしれません。

 

まず大前提はパニックならないこと。

スキルアップをし、維持し、自分のレベルに合わない海やダイバーと潜らない。

病気やメンタルの管理をする。

なにか水中で重大なトラブルにあっても、水面に出れて、浮力が確保出来れば(漂流して発見されない場合などは除いて)死ぬことはありません。

13. 第十のやるべきこと< 自分の身は自分で守る >

ダイビングで死なないためにやるべき10のこと|ダイビングショップアリエス

ダイビングで死なないようにするには、“本当の上手さ”を身に付け、自分の身は自分で守るしかありません。

 

イントラの目の前でトラブルにあえば、大抵は対処してくれるでしょう。

しかし、事故はロストの後に起こっていたり、イントラはほとんどの時間は前を向いていますから、対処できる状況は少ない。

「誰かが助けてくれる」と思ってはいけない。

それはトラブルが起きた時だけ思うのではなく、常に意識をしておくこと。

普段のダイビングで、誰かに助けてもらわないと対処出来なかった些細なトラブルはありませんか?

それがあるあなたは、とても大きなトラブルを防ぐことは出来ません。

 

また、自分の周りにいる“下手なダイバー”によって、あなたが危険に巻き込まれる可能性もある。

いつ事故にあってもおかしくないようなスキルのダイバーはよく見かける。

その人たちは、まず「自分は事故に遭いそうなダイバーだ」という認識は持っていないでしょう。

なぜなら「事故に遭ったことがないから」

 

「安全なダイビング」と「事故に遭わなかったダイビング」の違いが分からない人は多い。

その違いは危険までの距離。

 

ダイビングでは、色々なレベルのダイバーが同じチームになることもある。その日一緒に潜るダイバー全員が上手くなければ安全で楽しいダイビング出来ないかもしれない。

 

ダイビングの上達は時間がかかるし、数を潜るだけでも駄目、金儲けだけの講習をしているダイビングショップも沢山あるし、安全意識が低いインストラクターもいる。

 

安全なダイビングが出来るようになれるお店やインストラクターを探してください、

自己流では“本当の上手さ”は身に付きません。

それが<ダイビングで死なない>ための始まりです。

一件でもダイビングの事故を減らせますように。

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